ボッ 「こ、これはただごとではない」 屋敷に火を放たれ、逃げ場を失う曹操。 酒と男にうつつを抜かし、自分の大志を忘れた事への報いか。 曹操直属の護衛、典韋(字:次郎)は酒に酔って事態に気付くのに遅れた自分を悔やんだ。 「うぬう、曹操様の館には一歩も入れぬぞ」 「典韋だ、典韋が現れたぞ!」 死を覚悟して戦う典韋に、敵の兵士達も戸惑いを隠せない。 「ええい、典韋一人にナニをやっている」 「しかし……」 「遠巻きに悪口を言え!」 「や〜いや〜い、典韋は呉の相川が好きだ〜」 「夜中にオシッコ一人でいけないぞ〜」 「うぬぬ……! 貴様等許せ……うわ!」 罵詈雑言に気をとられ、足元に放たれた矢に気付く事が出来なかった。 「しまった……」 全身に矢を受け、典韋は絶命した。 「て、典韋……おお典韋。私は有能な部下を失ってしまった」
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